2020.05.14
臨時休校期間中の北海道の先生たちの声 vol.2~札幌藻岩高等学校 佐々木先生~
いま困っていること
嶋本:今日はよろしくお願いします!突然なんですが、いまって現場の先生たちは一番何に困っているんですか?
佐々木:(嶋本さんには何度か話しているかもしれませんが、)授業配信じゃないんですよ。生徒たちが安心して学びたいと思える環境づくりなんです。僕らは、普段毎日当たり前に子どもたちに会えていた。その中で子どもたちのモチベーションや体調なども見ることができていた。でも、いまそれができなくなってしまったんです。ここが一番困っていますね。
嶋本:巷に「オンライン授業のやり方!」みたいな情報がたくさん流れていますが、そういったことが最も大変なことなんですね…!
佐々木:そうなんです。僕らも、知り合いの主催する勉強会に参加したりして、オンライン授業のやり方は分かってきました。でも、みんなが上手な授業だけあれば勉強するわけじゃないんです。どれだけ上手に授業を配信するか?ではなく、どれだけ生徒が安心して学びたいと思える環境を作るか?を突き詰めるほうが、大事なんです。
嶋本:確かに、自分で勉強のモチベーションを作れない子たちにとっては、いまはとてもしんどい時期でしょうね…。
佐々木:仰る通りです。学びは、安心・安全の土台の上に成り立っています。これまで他校の先生から、朝夕のHR実践例などを勉強してきました。Google Classroomも市教委から使用が許可され、今後運用を行っていく予定なので、今後はZoomホームルームなどで生徒とゆっくり対話しながら、安全・安心の土台を築いていきたいと思っています!
嶋本:なるほど、生徒とのコミュニケーションツールも一苦労というわけですね…。前々からICT設備やソフトウェアが整備されていた私立高校とは違う悩みがありそうですね。
佐々木:そうなんです。実は先日、正式にZoomの使用の許諾が市教委から下りました。しかし、使用日時が定められたり、使用時間も1回15分と大きく制限されたりと、使えるツールが限られていたりというのが実は苦しかったりします…。
嶋本:そういった規制が少しずつ変わっていくといいですよね…。
いまチャレンジしているアクション
嶋本:様々な規制の苦しさなどもお伺いしましたが、その中でも佐々木さんは色々と動かれているように拝見しております。どんなことを実践されているのでしょうか?
佐々木:「ミライdesign」という社会の方々を学校に招いて実施するキャリア教育・探究学習のプログラムをもともと予定していたのですが、これらが臨時休校に伴い実施できなくなってしまいました。「オンラインでも何かできないか?」と考えたときに、Zoomなどで直接生徒とお招きする予定だった社会人の方々をつなげられれば良かったのですが、(取材時時点では)Zoomは使えなかったので…。そこで、私がその方々に取材をして、生徒限定で配信することにしたんです。
嶋本:なんとしてでも、生徒たちのキャリア探究を止めないためにできることを探していく動き、本当にすごいと思います…。
佐々木:とんでもないです!でも、逆にいまはチャンスでもありますよね。オンライン化などが進んで、社会がいい意味で変わってきている部分もあって。
嶋本:確かに!他人事だったいろんな問題が、自分にもまさに降りかかっていますもんね!
佐々木:そうです!「COVID-19は、みんなの住んでいるまちにどんな影響があったか?」とか身近な視点で、社会問題をとらえやすくなりました。そんなことを考えてもらう課題を出してみたりもしていますね!
嶋本:大人も子供も平等ですもんね。答えが分からないという点で。
佐々木:本当にそうですよねぇ…。そういう意味では、僕も個人的にチャレンジを始めています!今までより少し時間的な余裕があるので、「SDGs de地方創生」や「Get the point」などのSDGsカードゲーム関連の資格講習会に自主的に参加してみたりして、自分の知見を広げてみてます!
嶋本:なるほど。普段忙しくてできないことに先生自身がチャレンジするチャンスでもあるんですね!
Afterコロナの世界に向けた学校の変化
嶋本:ここまで高品質なオンライン教材が出てきた世界で、学校の意義や学ぶ意義ってなんなんだろう?って最近よく考えるのですが、どのようにお考えですか?失礼な質問だったらスミマセン…。
佐々木:「教員がどう変わるか?」という問いだとすると、これまでのように教え込むというよりは、生徒の学びを伴走するイメージに、我々の仕事はなっていかないといけないんだろうなぁと思っています。そして、時には生徒と同じテーマに対して本気になっている姿を見せる。さっきの話のように対等な立場で協働していける存在になる、そのための準備の時間なんじゃないかって今思っています。
嶋本:力強い…!伴走しながら、時に協働。そういった学び方ができる教室が日本中に溢れていくといいですね…。
佐々木:はい!先日医療コンサルの方が、「少子高齢化が進んでいる中で、病院の数は減っておらず、"病院が選ばれる時代"になってきている。」とおっしゃっていましたが、それは学校も同じだなと思いました。子どもたちがココで学びたいと思ってもらえるような、教員・教室・学校であり続けられるように努力したいです。
嶋本:「普通科の差別化」が起きていくんでしょうかね!そういった変化が起きていくと、もっと学校ごとの差が生まれていきそうで、生徒達もワクワクできる場所が増えていきそうですね!
EDU FESに期待すること
嶋本:最後に、そんな佐々木さんがEDU FESに期待することはどんなことですか?
佐々木:すごく個人的な意見ですが、学校って閉じた空間になりがちです。なので、学校と学校、学校の外とつなぐ場を創ってほしい。そこに行ったら、「北海道にこんな人たちが居るのか~」ということが知れるデータベースがあると嬉しいです。それはリアルの場でも、オンラインでも。
嶋本:なるほど!その時には、どんな情報にアクセスできることを特に意識しますか?
佐々木:そうですね~。その方が、どういったチャレンジをして、結果としてどういう風に働いたのか?というプロセスや、生徒にこんな行動変容が現れたといった変化などが特に気になりますね。そういったことを知れたり、共有しあえる場所があると魅力的です!
嶋本:貴重な意見、ありがとうございます!EDU FES ONLINEもそういったことを意識して情報発信していきます!
佐々木:是非お願いします!笑 その意味で言うと、先生たちだけじゃなく、生徒も集まる場もあってもいいかもしれません!学校の垣根を取っ払って、いろんな学生が集まる場。こういう場は、実は学校の中にいると作りづらい場なんですよね。
嶋本:なるほどなるほど!確かに「A高校の先生と、B高校・C高校の生徒が一つのテーマを探究している」なんて学び方があっても面白い…。そういう場を創れるように頑張ります!(今年中にできるように何とか頑張ろう…笑)
佐々木:楽しみにしています!
嶋本:本日はお忙しい中、ありがとうございました!
インタビューを振り返って
「子どもたちの学びは、安心・安全の土台の上に成り立つ」という言葉がとても印象的でした。普段は当たり前に会えていた生徒たちと会えなくなることで、改めて学校の価値を見直すきっかけになったということですね。
数年後には、学校は、僕らが通っていたころのものとは異なる姿に生まれ変わっているかもしれません。そう変わっていこうとしている先生方が少なくとも北海道の中にはたくさんいらっしゃいます。その方々の声に耳を傾けられるEDU FESでありたいし、と同時にこの変化を後押しできる情報メディアでありたいと改めて思いました。
以上!本日はありがとうございました!
佐々木 佑季YUKI SASAKI
札幌藻岩高校教員
教員生活12年目、本校勤務3年目。数学科。3学年担任、進路指導部、探究委員会委員として3学年の総合的な学習の時間を担当。自ら学びへ向かう生徒となるために、高校時代に様々な経験や体験を積んでほしいと考えます。そのために、学校が地域や社会と繋がり、そこをフィールドに生徒が学び、経験し、それらの体験を自分事として捉えることができる機会を作りたいです。教員の役割は、生徒に伴走し、地域や社会へ大きく一歩踏み出せるように背中を押してあげることと思います。そのような経験のサイクルの中から、高校生活はもちろん、卒業後も様々な挑戦が出来る、そしてひとまわりもふたまわりも大きくなった大人になって生徒と再会できることを希望に、学校教育に携わらせてもらっています。