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2020.08.24

EDUFES北海道参加団体インタビュー 第三回 エムズコドモシッティング

第三回はエムズコドモシッティング で作業療法士として活躍する青木美紀さん(みきてぃ)にお話をお伺いしました。
“感覚遊び“を始めとした、子どもの発達に関わりながら遊ぶことを専門にしており、
ベビーシッターまでこなす「子どものプロ」に為になる話をたくさん聞くことができました。

1.エムズコドモシッティング を始めたきっかけを教えてください。

みきてぃ:以前は幼稚園に所属する作業療法士でしたが、組織に身を置く以上、子どもたちや保護者との関わり方に制限がかかることが多く、私はそういった関わりを大事にしたいと思っていたので、仕事を辞めようかなーと考えていました。
そんな中、信頼している人に独立を勧められたのがきっかけで、その時は後先考えずにきっぱりやめましたが、今はそれでよかったと思っています。

金本:仕事内容はあまり変わりましたか?

みきてぃ:フリーになって間口がとても広がりました。
それまでは幼稚園にいる障がい児のお子さんしか対象にできなかったんですが、今はいくつかやらせて頂いています。
講師のお仕事では今までの経験を活かし保育施設や児童デイの先生たちに体験型の勉強会でお話しをしています。資料なしで、実際に「感覚ってどんなふうに感じるのか」を体験してもらう。これが、結構面白いと好評頂いています。
ベビシ(ベビーシッター)では普段出会えない著名人のお子さんを預かる事があったり、海外でのベビシにも呼ばれたり、出張に同行し、ママの仕事中は動物園で1日中遊んだ後、一緒にホテルに泊まる。そんなベビシの多様性にビックリしたり、ワクワクしています。また去年から重度の障がいのお子様もベビシできるようにと事業所に所属し訪問リハの仕事を始めたのですが、ニーズがとても高く、週に10件程リハを行っています。
これらの仕事の中で出会う子どもたちは障害を持ったお子さんだったり、一般のお子さんだったり様々。最近はママのケアもさせて頂く機会もあります。以前の職場だと基本的に障がい児しか接しなかった事を考えるとかなり幅が広がりましたし、刺激も沢山。勉強をもっともっとしないければと私自身を奮い立たせてもらっています。

その他に前回のEDUFESでも行ったのですが、道内外でも行う親子の感覚遊びのイベントがすごく面白くて。写真家さんとコラボしたり、まちなかでやったり、少人数でこじんまりやったりとしているんですが、パパもママも一緒に走ったり、側転してくれたり、ヨガをしたり、子どもの挑戦に目を細めて笑ったり…。大人も感覚遊びを結構楽しんでもらえているような気がします。

金本:仕事をやめようと思っていたけど、でもやっぱり作業療法士の道を選んだんですね。

みきてぃ:はい、そうですね。作業療法士の資格を取る前も、実は英語が出来ないくせに(笑)子ども英会話スクールやアメリカのプライベートスクールのインターンで働いていて。やっぱり“子どもが大好きだから”っていうのが根底にあるんですね。それに、子どもに関わっていると、ママ達にも関わることが多くて。そのママ達も本当に素敵な方が沢山いらっしゃって。お話しているとすごく楽しいんです。それにママってやっぱりすごいんですよ。何がって言うと、障がい児のママから学ぶ事や教えてもらう事は教科書に書かれている子どもの疾患うんぬんより、「この子はこうされるのが好きでね〜」「朝はいつも発作が起きて機嫌がわるいのよ」「このほっぺのここをくるくるっとすると笑うんですよ」などなど…。ママが何気なく話す一言は、私たちが子どもに接する時のヒントになる事が沢山あるし、一緒に“どうやったらいいのかな?”って学びも交換もできる。私は作業療法士になってからず〜っとママ達に育ててもらっています 笑
この場を借りてお礼を言いたいです。「いつも本当にありがとうございます!」

金本:子どもって色々教えてくれますよね。
何か、子どもってすごいなぁとか仕事やっててよかったなぁって思った瞬間ってありますか?

みきてぃ:あります。
症例の少ない難病で喋れない女の子の訪問リハのお話しです。ある時、今までは私に全く近づいてくれなかったのに、その日は急接近してきて私の顔を触ったり、髪をぐちゃぐちゃにしたり。そのうち、胸の上あたりをドンと押してきて、女の子が自分の指で自分の口を指さし何か訴えているんですね。心で話してくるというか…。
『みきてぃに何か話して欲しいの?』って聞くとじっと目を見てくる。
もしかして…私に何か言って欲しいのかな???と。
その時、私の口から出てきたのは『お母さん大好き!』『いつもありがとう!』
その瞬間、涙がでてきちゃって。そうしたら、その子が私の胸をまた何度も強く叩いて、
まるで “それ!” “もっと、もっと言って!!” って言ってるように…。
その子はきっといつも懸命に自分をお世話してくれるママにずっと伝えたかった言葉=“声にならない声”なんだろうなと。それを聞いたママは泣きながら「この子の声が聞こえたような気がします」と…。

子どもは「話を聞いてくれる人」ってわかります。
そんな話を聞いてくれる人に、私はもしかして近づいたのかもしれないと。
『声にならない声を聴ける人になる』と心に誓った日でもあります 笑

金本:できてたって話じゃないですか笑

みきてぃ:いやいやいやまだまだです。他に子どもってすごいな〜って思うのは、自閉症の子どもたちとか、喋れない子どもたち、国籍が違う子どもたちでもお互いにコミュニケーションを取っておもちゃをやりとりしたり、一緒に遊んだりする所。
この子たちって言葉いらないんだなって。言葉以外の感覚を使って話をしてる。すごい能力だなぁって思う。

金本:感覚遊びの記事https://note.com/kikky0824を最近よく書いてると思うのですが、それもお母さんから教えてもらったこととかも含まれてるんですか?

みきてぃ:そうですね、記事の内容はママからのアドバイスも頂いて実践しているものが積み重なり経験となっているものも含まれていますし、合わせて自分で勉強したことを織り交ぜて発信しています。これを読んで、世の中のお母さんの子育てがもっと楽になってくれるといいなって思って書いています。伝わるといいなぁ。

2.今の仕事をしていく上で大事にしていることってありますか。

青木:自己管理 笑

金本:笑

青木:イベントの後に声だけが出なくなったことがあって。体はピンピンしてるのに…。
たった声が出なくなっただけでみんなにすごく迷惑をかけちゃったんです。
それで一回、固定で入っていたベビシのママに「今日は帰っていいです。来週その分お願いします。これなら子どもが楽しめないから。こういう状況は前日までに早めに教えてください」って注意されちゃった事があって。
何気なく話していた声だったけど、この声が実は子どもが聞きやすかった声らしいんです。
ちなみにそのママは心配しての助言で帰りに蜂蜜を舐めさせてくれて、喉にいいという紅茶を出してくれて…すっごく優しいママなんです。だからこそ自己管理が必要だと。
声が出なくなるだけで私の価値がガクッと下がる事を知り、しかも声も私の売りだったのかと気づきを頂く事が出来ました。プロとして、知識も経験も大事だけど、健康管理は基本だなって思いましたね。

金本:子どもと接する時に大事にすることって何かありますか?

みきてぃ:目で聞く。
言葉を発せない子ども達も多いので、目で様子を見てその子が何を話しているのかっていうのをその時の環境とか体の微妙な動きとか、呼吸などで感じ取るように心がけています。

金本:それってすごく難しいですよね。

みきてぃ:とても難しい。
解釈一つ間違えると子どもは不快になったり、悲しくなったり、怒り出す。だって一生懸命自分の出来る方法で訴えてくれてるから。
あっ、少し目を見開いた、右手の小指ピクッと動いた、とか微妙な変化に気づけなかったら、「あぁ、この子はこれには興味が無いんだな」って判断を間違えてしまう。なので、日々、子どもたちから気づきの練習をさせてもらっています。

あとは、『子供がやりたいことをやらせる』ことも大事にしてる。その方が絶対に伸びるから。もちろん、作業療法士なので、ただやらせるだけはなく、その子に必要な感覚や発達に結びつけるような仕掛けをうま〜くやりたいことにミックスさせる。
そこが私たち専門職の仕事だから。

3.今困っていることってありますか?

みきてぃ:すごく好きなようにさせてもらってるからあまりないなぁ

金本:コロナの影響とかは結構治ってきましたか?

みきてぃ:コロナでは逆に訪問リハの仕事が増えましたね。
「子どもが外に出られなくてストレスが溜まってるから来て来て」って。

あ、困ってることあった!オンラインでできるといいなぁって思う。

金本:やっぱりオンラインとオフラインは違いが大きいですか?

みきてぃ:大きい!オンラインをやることで助かる人が増えるかもしれないし。

みきてぃ:そうですね、初めてオンラインで講師をする機会を頂いて、その時に感じたのですが、画面越しに顔を見て話したり、言葉のかけ方で表情や行動がすぐに変化する事や
仲良くなった子だと、画面に顔が映るだけで喜んでもらえる姿が目の前で起きる。そんな事が、自分が今いる場所でそこに出向かなくても出来る、ドラえもんの道具のような便利さはありますよね。
逆にオンラインの方がいいなぁって思うのは、やっぱり息遣いとか、温もりとか、一緒の物を共有しながら遊びを展開していけるなどの点だよね。

コロナ禍になって、選ぶのが困るくらい、色々と教育相談などオンラインでありますよね。なので、私がやっても…って思ってたんですが、お客さんから、「ぜひやってください!」って言われて、
それで役に立てるのであればタイミングみてちゃんとやろう!と思ってます。その時には、近代文明の最新機器を操作するのが苦手な私なのでEDUFESメンバーに助けてもらいながらやってみようと思っています。笑

金本:子どもを預けてくれるってことはお母さんも美紀さんのことを信頼していて、そういう信頼している人に話を聞いてもらえるって、それだけで安心になりますよね。

4. 今後の展開や、やっていきたいことってありますか?

みきてぃ:フィットネスクラブ ラ・シエスタで『SIキッズヨガ』を始めます。親子で感覚統合の基礎である揺れや重力の感覚を“トランポリン・ハンモック”を使って感じたり、原始反射を統合するヨガを行い、パパママに発達のワンポイントをお伝えしたりします。
コロナ対策として、ソーシャルディスタンスやオゾン発生装置の設置、マスク装着など新北海道スタイルを実践し行い、状況を見ながら不定期で開催していこうと思っています。

金本:トランポリンとかハンモックを使うと期待できる効果ってどんなことあるんですか?

みきてぃ:子どもって大人よりも強く感覚を欲しがる子が多い。パパママが体一つで子どもとずっと向き合って子どもを満足させるのって、時間的にも体力的にもすごく難しい時もある。でもトランポリンやハンモックなど介して、大きなジャンプを繰り返し行って、子どもが足の裏で体の全身の重みを感じたり、ハンモックで沢山揺れた後にゴロンとしてゆっくりした揺れで風を感じながらリラックスしたりすると、パパママが体を張ってマンツーマンで遊ぶよりもはるかに速いスピードで子どもが「遊んだ〜!」と感じる事が出来るんですね。心も体も必要な感覚を満たせば満足し、子どもは落ち着く事が出来る。そうするとパパママもずっと全力疾走し続ける遊び方より自身の体の負担が楽になるし、子ども達も楽しめる。
もちろん、トランポリンやハンモックがおうちの広さの関係などでない家庭がほとんど。その場合は、シーツなどを利用してパパママが子供を乗せて揺らしてあげるとハンモック代わりに出来るし、パパママが嫌じゃなければベッドでジャンプする事でトランポリンの代わりにもなる。
この遊びは体幹を鍛えるだけじゃなくて、眼球運動にもなったり、情緒の安定にも繋がるんですね。このSI KIDS YOGAクラスでは子どもの発達に必要な感覚をパパママに知ってもらう時間やきっかけになればいいなと思っています。

他には『教育関係や支援の方々に今やっている感覚の部分の話をしたいなぁ』って。
全部の幼稚園や保育園でやりたいくらい。
知ってもらうと、みんな子どもの見方が変わってくるから。
話すの苦手だけど、ラジオでも月1回、5分位お話しできたらいいなぁと思っています。

インタビューのあとは、近くの公園で裸足でヨガを楽しみました。

インタビューを振り返って

とても明るい性格で、子どもからお母さんまで関わる人みんなに信頼され、愛されるような人柄でした。

子どもとの接し方などは、本当にプロ中のプロで、今回のインタビューでもそのノウハウに触れることができました。

その仕事の原動力も、お母さんの子育てを少しでも楽にしてあげたいという言葉が印象的でした。

僕は未就学児と触れ合う機会も少なく、今回のインタビューは新しい発見の連続でした。

可愛い姪っ子とコミュニケーションを取る時に今回の学びを参考にしようかなぁと思いました。

青木美紀Miki Aoki

作業療法士

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