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2020.09.18

EDUFES北海道参加団体インタビュー 第四回 札幌聖心女子学院高等学校

第4回は、札幌聖心女子学院高等学校の樋口教諭にお話を伺ってきました。
札幌聖心女子学院は札幌市では珍しい中高一貫校の一つで、女子校というのも札幌にはそんなに多くなく、そういった面で言うと、共学であり、中高別の僕自身の生い立ちの中では全くもって未知のお話を聞くことができました。

1.なぜ教師になろうと思ったのか、きっかけを教えてください。

樋口:学校の先生になりたいと思ったのは、中学生の時くらいです。
単純に学校が好きだったんですよね。いろんなことをさせてもらったというか。
学校という場所自体が楽しくて面白い場所だったというのがあると思います。

金本:具体的にどんなところが面白いと感じていましたか?

樋口:部活動や委員会活動、生徒会の活動だとかもそうなんですけど。単純に学校の先生がやってくださる授業が面白くて。勉強する面白さというのはずっと自分のベースにありますね。
自分自身ものすごく勉強ができたというわけでは全然ないんですが、できないことができるようになっていくのは楽しいなと思っていました。
ただ、自分の勉強したいことって何だろうと思った時に、当時は勉強したい分野というのが特になかったですね。良くも悪くも学校という社会というか環境で、自分が完結してしまっている感はあります。自分が学校の先生になったら、生徒が楽しく過ごすのをサポートできるといいなと思いますね。

僕は国語科の教員なのですが、文学方面よりも語学に興味が向いています。日本語の勉強をするのが面白いなと……。
普段使っている言葉の語源を知ったり、文法的なことを色々と勉強したりしているうちに、今の日本語のルーツって、ひょっとしたらこんなところにあるのかも……という気づきがあって面白かったです。

金本:学生時代も国語が一番得意だったんですか?

樋口:国語はそれほどでもなかったです。不真面目な生徒でした。最終的なセンター試験の点数で言うと、高校生の時は生物と倫理が一番得意でしたね。
テストで点数を取れるというのももちろん嬉しいですが、自分で何か一つ専門性を持っていきたいとなった時に、得意不得意だけじゃなくて、好きでい続けられそう、もう少し自分で深めていきたいなと思って……、それがたまたま国語だったみたいです。

金本:ちなみに私立を選んだ理由とかってありますか?

樋口:僕自身はずっと公立育ちでしたし、特に私立がいいというのはなかったのですが、中高一貫がいいなとは思っていました。
最初は中学校の先生がいいと思っていましたが、中学生って反抗期がきたりして、生徒とぶつかっていって、色々あって、なんやかんやでわかり合って、仲良くなったところですぐ卒業していっちゃうイメージがあって……。
中高一貫は6年間の長いスパンで子どもの成長に寄り添えるのが魅力的ですね。
一番青春真っ只中で、大人になる中で、反抗して、頭ぐちゃぐちゃになって、いろんなこと乗り越えて、6年後、すごく成長して卒業していく……、そこに寄り添えるっていうのが、とてもいいなぁと思います。

金本:そういった考え方もあるんですね。

樋口:公立の学校だと3年とか、長くても5年とかで次の職場に転勤することが普通だと思いますが、うちの学校だと、良くも悪くもずっとここにいることができて、古い卒業生が訪ねてきた時でもそこに会えるので、そういった楽しみはあります。
卒業生が訪ねてきた時に、習った時の先生がいるというのは、公立の学校だと少ないのかなと思います。

金本:中高一貫の学校もいくつかありますけど、聖心を選んだ理由みたいなのってありますか?

樋口:中高一貫で探した時に大学を出るタイミングで募集がかかっていたっていうのが一つです。
あとは女子校というのが未知の領域で、共学とはどんな違いがあるんだろうって興味が湧いたことですかね。
自分は公立の共学出身ですけど、大学で一緒になった女子校出身の人って、何かこう、他の人と違う雰囲気があったような気がして……。
実際どんな現場なんだろうなっていうのは少し気になってはいました。

僕は大学を出てからこちらの学校でお世話になって、他の学校で務めた経験はないのですが、他の学校の先生と研修でご一緒した時に男子校や共学校の話を聞いてみると、やっぱり違うなと思ったことはありますね。
そういう情報交換するときも面白いです。

金本:確かにほとんどが共学の学校で、女子校の現場に身を置いている人の意見ってとても貴重な感じがしますよね。

樋口:僕が共学の先生になっていたとしたら、女子校の先生の話を聞く機会ってあんまりなかったかもしれないと思います。
女子校の先生になったからこそ、他の校種の話を意識して聞くようになったということもあります。
研修などで他の先生と話す機会があってもほとんどが別の校種の先生なので、この学校に務めているからこそ、気づきが多くなったのかなと思います。

金本:他の校種の先生と話してて、女子校はどんなところが違うと感じるのはどんな点ですか。

樋口:よくお嬢様学校とかってイメージがあるとは思うんですが、実際務めてみると全然そんなことなくて、良くも悪くも女の子しかいないので、元気な子も、おとなしい子も当然いますし……。ただ、同年代の男の子と比べて成長が早い傾向はあると思います。
共学のように、「男の子がいるので素の自分を出しにくい」というようなことがあまりないようですね。
共学だと、「重いものを運ぶの時は男の子にやってもらう」みたいなのがあるかもしれないけど、女子校だとなんでも自分でやるというか……。

あとは、男の子って挑発的に接すると、「なにくそー!」って気合が入る場合が結構あるらしいですけど、女の子にはあんまり効果的ではないですね。
例えば、問題解かせるときとかも、男の子相手なら、「この問題解けないだろ?」みたいな挑発的な問いかけ方をすると燃えるようですけど、女の子相手だとそうはいかなくて。
男女で差別するわけではないですけど、そういうのは少し気を使いますね。
男女別々というか、それぞれの集団に合ったやり方というのはあると思います。

金本:そういう意味でいうと、自分が受けてきた教育やメソッドが通用しないという点で、男性が女子校の先生をやるっていうのは大変な苦労がありますよね。

樋口:そうですね。苦労がないこともないですが、自分が育ってきた環境と違う中で、この子たちのためにどんなことがしてあげられるのかなと考えながらやっています。

金本:親御さんとかが自分の子どもを預ける学校を決める際に、共学と別学の性質の違いとかもっと知れるといいなって思います。

樋口:そういったイベントが何年か前まではちょくちょくありまして、札幌でも女子校フェアとかやってたことがありました。他にも、私学のよさをアピールするイベントで「女子校ってこういうところがいいですよ」と紹介することはあります。

金本:個人的には先入観ですけど、男子も女子も、成長の過程で異性との関わりって大事だと思っていたんですが、今日の話を聞いていると、女子校で培われるものも大事なんだなぁって感じますね。

樋口:そうですね。親御さん相手に宣伝するときとかは、そういったことも推していきますね。「男の子と一緒だとやりにくいことも、のびのびとできますよ」とか。
共学だとやっぱり男の子がリーダーになることが多いと思いますが、女子校だとリーダー経験も他の学校にいるよりは多いと思います。

金本:今の時代は女性もバリバリ働く時代なので、そういうスキルが生きてきそうですよね。

2.先生という仕事をやっていく上で大事にしていることってありますか。

樋口:教科指導に関しては、今はオンラインの授業が増えてきていますよね。
予備校の授業動画をはじめとして、いろいろといいものが世の中にありますけど、そういうものと比べて自分がどこまでできるかっていうのは考えています。
教科指導の他にもやらないといけないことがたくさんある中で、どこまで授業に力を入れられるか。
教え方の工夫を自分でするのはもちろんなのですが、自分の教員としての存在価値がどこにあるかと考えたとき、目の前の生徒たちが今まさにわからないことが何かだとか、今この知識を投げかけたほうがいいタイミングだとか、目の前で関わっているからこそできるアプローチを考えていきたいなと思っています。
授業としての完成度っていうのも大事なんですけど、こちらがどれだけ準備して会心の授業をしたところで、子どもたちって、その時その時で授業と全然関係ないことで悩んでたりするんですよね。部活のことだったり家族のことだったり。その日その日のコンディションもありますし……。
このことをこの子にやらせようって思っても、今この瞬間はちょっと厳しいなって思ったら後回しにしたりします。
クラス全体に対してもそうです。生徒たちの様子を見ながら、叱ってみたり、逆に緩く始めてみたり……。
そのあたりですよね。自分が予備校の先生方と比べてできると思うことは。
目の前の生徒に一番ちょうどいい関わり方・教え方をしていきたいなと思っています。

あとは手を抜かないでやっていきたいということですかね。
自分の家庭のことだったり、自分の担当している他の業務だったり。
いろいろと大変なことがあっても、生徒たちのためにやることに関しては、なるべく時間をかけて、手を抜かずにやっていきたいなと思っています。

金本:具体的に言うと、教材研究だったり部活の指導のあたりになりますかね。

樋口:そうですね。
部活については今年はコーラス部を担当していますが、今はコロナの影響でなかなか今まで通りの活動ができなくて。
だからこそ、「こういう音源があったよ」とか、「家でできるトレーニング」とか、今だからこそできることを紹介したりしています。

3.今困っていることはありますか。

樋口:今までやれていた学習活動・部活動・委員会活動がやれなくなっていて……。
だからこそ「今やれることってなんだろう」と考えながらやっていますが、本当にこのやり方でいいのだろうかという悩みはあります。
あとは、企画を思いついて、やろうって思ってもインフラが追いついてないっていうのがあって。
今年度は学校祭ができなかったのですが、高校3年生が最後の学校祭で何もできないのもかわいそうだということで、何かこの状況でもやれることを生徒たちに企画してもらってやろうということになりました。ただ、企画を思いついてもオンラインの環境が十分でなくて実現しにくいというようなことはあります。
生徒たちがやりたいと思ってくれているのに、その発想に学校の環境・設備が追いついてなくて、全部はできないかもしれないというのがもどかしいです。

あとはコロナの影響ですが、夏休みの前後で寄宿生が帰省したりと、人の動きが多くなって、感染していないかとか、そういう心配事はありますね。寄宿生が戻ってきてから、健康観察のためにオンライン学習期間を設けたりもしました。

でも、コロナで悪いことばかりではなくて、自粛期間中に授業がまともにできなかったぶん、自粛明けに久しぶりに子どもたちと対面で授業できて、それはすごく嬉しかったです。
一時的にオンラインでやったからこそ、対面での関わり合いが素晴らしいということを再認識できました。

4.今後の展望、やっていきたいことを教えてください。

樋口:私は今探究学習関係をメインで担当しています。去年までは生徒たちが校外に出て外部の人の話を聞いたりしていたのですけど、今年はそういったフィールドワークができなくなってしまって。
協力してくださる方に「zoomでやりとりさせてください」とか、「生徒からメールを送るのでアドバイスをお願いします」というようなやりとりが少しずつ始まっています。
コロナで受けた影響は、1年2年で元に戻るというのは考えにくくて、今は少し辛い時期ですが、これを機に環境をもっと整えたいなと思っています。

そうすると、違う学校に通っている生徒同士がオンラインで繋がっていくとか、学校という枠にとらわれずに行動できるような力がついていくのではないかと思います。

子どもたちも対面でやるのとオンラインでやるので勝手が違ってきて、不慣れだったりぎこちなかったりするという課題はあるのですけど……。
外部の方の講話をオンラインでやったり、生徒とやりとりしたりできるような仕組みを整えていきたいなと思っています。

金本:オンラインに抵抗がなくなると、今までふれあうことのなかった人との関わりを持てるようになりますもんね。

樋口:そうですね。札幌に限らず、日本全国とも繋がれますし。
うちの学校は海外とのつながりも強く、姉妹校もたくさんあります。例えば今までシアトルの姉妹校に短期留学するプログラムがあったのですが、今年度はオンラインで英語の学習をするプログラムに変更になりました。
ここ一年は今までやっていたことをオンラインを活用した方法でやれるように努めていけたらと思っています。

まとめ

今まで女子校という領域は全く知る機会がなかったので、発見の連続でした。
確かに、いろいろな面で是正されてきているとはいえ、今現在でも社会全体としては男性主導の世の中という側面は存在しており、学校というコミュニティでも男子がリーダーシップを執ることが多い気がします。
そんな中で男性も女性も双方が活躍し、主導して物事を進めていくこれからの時代にこそ、女子校での学びというのは子どもたちに大きな気づきを与えてくれそうだと感じました。

樋口 敏也Toshiya Higuchi

札幌聖心女子学院中学校・高等学校 教員

教員生活11年目。札幌市出身。北海道教育大学札幌校卒業、同大学院修了後、札幌聖心女子学院中学校・高等学校で国語科の教員をしている。
探究学習「Global Issues」の担当するようになって2年目。SDGsを入り口に、グローバルな社会課題をテーマとした探究的な学習を通して生徒の主体性を養い、自分がやりたいことを実現して活躍できるような人に育っていってもらいたいと考えている。
正解のない問いに取り組む生徒に寄り添い、教員自身も探究的な姿勢を持って生徒とともに学ぶことを意識している。
ここ数年は、生徒たちが普段使うしゃべり言葉を観察・分析して文法的な説明を整えたり、生徒たちの言葉の変化の理由を考えたりするのが趣味。授業に活かせるととても嬉しい。

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