2020.05.18
臨時休校期間中の北海道の先生たちの声 vol.4~北海道奥尻高等学校 成田先生~
いま困っていること
嶋本:臨時休校が長い間続いているけれど、特にどんなことに困っているの?
成田:奥尻高校特有だと思うんだけど、どういう風に安全に戻すか?なんだよね。島の医療施設が整っていないこともあって、島の外から来ている生徒たちを保護者の元に返しているんだけど、その子たちを6月からどういうステップで島に帰していくか?は慎重に議論しているよ。
嶋本:確かに、奥尻特有の話!でも、今は近くにいてもいなくても、コミュニケーションとるならオンラインツールだから、実はあんまり変わらないのか。
成田:まぁ、そうだね。3年生担当ってこともあるから、参考になりそうな情報はスタディサプリのメッセージ機能を使って、連絡しているよ。生徒にとっては、いつも通りじゃないから大変だけど、そんな時になにができるか?ってことを考える良いきっかけになっているなぁと思うな。学校じゃ学べない答えのない問いに向かっていく感じで。
嶋本:すごい、めっちゃポジティブ!笑 生徒達もポジティブだったりするの?
成田:全員ではないけど、ポジティブな子たちが沢山いるよ!少し声かけたら、「Zoom自習室をつくってみたい!」って友達と一緒に創ったりしてる子まで居る。高校生のコロナ対策サミットやろう!なんて言って、いろんな学校の生徒を集めてきて勝手にしゃべっている、なんて子たちまで居るよ。「先生来なくてイイよ!」なんて言われてるわ…。笑
嶋本:なるほど…。先生がポジティブだと、生徒もポジティブだなぁ。奥尻高校がこれまでZoomなどを使ったICT教育の取組をおこなってきた背景があるからなんだろうね。
成田:そうかもしれない!
いまチャレンジしているアクション
嶋本:先生たちが、何かチャレンジしてみたこととかある?
成田:卒業式、離任式、着任式は全部オンラインでやったね。他にも、生徒と先生と、生徒の将来の夢に近い職業の社会人の3人で、キャリア探究に向けた面談やサポートをしたり…。とにかくできると思ったことはなんでもやっているよ。
嶋本:ほうほう!すごい…!なんで、そんなにたくさんのことができるの?
成田:2つあると思うな。1つは、生徒の人数が少ないから。あともう1つは、校長・教頭が「やっていい」って言ってくれるからかな。自分たちが思いついたことが、よほど危険なものでない限り許可してくれるんだよね。
嶋本:とても良い環境だな…。生徒も少ないから、一人一人に寄り添ってオンラインでの対応を検討することができるのか。
成田:そうそう!あとは、奥尻島って、基本はないものばかり名だからさ。足りないものをどうするか?ってよりも、あるものでなんとかする!という方針でみんな逞しくアクションしていっているよ。
嶋本:まさに、できるところから、できることをという方針で行動しているのね!
成田:うん、そう!例えば、生徒たちの生活習慣管理も、ずっと授業やるのは大変だから、午前中だけでもまずは集める。そこで様子を伺ったりして、残りの時間は生徒たちに過ごし方を任せてる感じだね。有意義な外部イベントとかがありそうだったら、案内してあげたりもしているけど!(http://www.town.okushiri.lg.jp/highschool/detail/00005230.html)
嶋本:すごいなぁ。生徒たちに任せる余白も残しているのが、なんだか本当に進んでいる考え方だね。外部イベントとかも積極的に先生が集めて共有してあげているのも、なかなかやりにくいことをサクッとやっているなぁ!
Afterコロナの世界に向けた学校の変化
嶋本:ここまでの話で、奥尻高校が普通の高校じゃないのは分かってきたわ。笑 そんな成田君は、これからの学校の位置づけって、生徒にとってどう変わっていくと思う?
成田:それ、難しい質問だなぁ。やっぱりさ、勉強はスタディサプリ、カウンセリングは心理カウンセラーに勝てないんだよなぁ、先生って。でも、生徒のことは一番理解している自信がある。その子にあう教材・学びの機会をキュレーションして届けてあげられる人になりたいよね。そういう意味では、プロデューサーっぽくなるのかも。君は、この人と会ったら一番刺激をもらえるぞ!みたいなことをさらっと教えてあげられるような。
嶋本:すごくこれからの学校に求められていきそう。僕もいろいろなサービスを見ているからこそ、うまく学校と学校の外のサービスが繋がっていけばいいなぁと思っているので、そういう現場の先生とこうして意見交換できているのが嬉しいな!
成田:ありがとうございます!笑 でも、さっきも言った通り、この人数だから出来ているって言うのはあると思う。札幌のような大規模な学校で同じことができるかはわからないわ。
嶋本:でも、「奥尻にいって、少規模校で学ぶことを選ぶ学生」が出てくるといいね。そういう選択を、僕ら大人が阻まないで、提示してあげたい。
成田:そうだね!そうなったら、最高だね!
EDU FESに期待すること
嶋本:最後に!北海道のなかで、いろんな教育をひろげる役割を担っていこうとしているEDU FESに、どんなことを期待している?
成田:さっきも言ったように、先生のプロデューサーの役割が大きくなっていくとするじゃない?その時に、いろんなジャンルの色んな人が集まっている場所であってほしい。そこにいって、「こんな人いないかい?」って聞けて、「こんな人いるよ」って言ってくれる場所であってほしい。
嶋本:学校の外の人と学校を繋ぐ役割だよね、きっと。海外だとSXSWってイベントがあって、そこではビジネス・アート・教育の人たちが入り混じって交流できる場所になるんだよね。そんな場所があれば、最高だよね。
成田:そうそう、そんな感じ!教員の世界から繋がりにくいところを、繋いでほしい。困ったときに、すぐに頼れる場所。
嶋本:このWebサイトでもEDU MATCHってページで、そういうことができるようにする!もう少しお待ちくださいな!
成田:これからもいろいろと面白いことがあったらシェアして下さい!
嶋本:こちらこそ!今日は忙しい中、ありがとう!
インタビューを振り返って
「先生の役割は子どもたちの学びのプロデューサーに」。とても印象的でした。先生だけで子どもたちの学びを完結させるのではなく、学校外のさまざまな大人と協力しながら、子どもたちの学びに伴走していく。そして、それを夢物語として語るのではなく、すでに実践しているということに、とても驚かされました。
学校や自治体によってもちろんできる/できないの差はありますが、こういった動きが北海道の中で存在していることを、少しでも多くの方に知ってほしいと思います。そして、「自分のトコロだと同できるだろう?」と考えて頂いたり、「どうすればいい?」とEDU FESに相談してもらえるようになればいいなぁと勝手に思っていたりします。そうなるよう、私たちも頑張っていきます!
以上!本日はありがとうございました!
成田 冬真TOMA NARITA
北海道奥尻高校教員
教員生活、本校勤務ともに5年目。地歴・公民科。3学年担任、総務部長として、5年目を迎えた全国からの生徒募集を含む広報活動を担当。同じく5年目を数える「まなびじま奥尻プロジェクト」を推進するOkushiriety委員会(「まなびじま奥尻プロジェクト」推進委員会)の一員として、学校の魅力化を進めている。生徒には、「社会で活躍できる世界一幸せな人」になってほしいと思っている。社会との関わりを増やし、自分なりの社会貢献の方法を一緒に模索するなかで、一人ひとりの個性を発見できると考えている。その関わりを効果的にするためにも、生徒の実情を最も理解できるのは教員であると考え、教員は生徒にとって最も刺激を与えられるプロフェッショナルと引き合わせるプロデューサー的な役割を担うと考えている。