2020.05.19
With/Afterコロナへ向かうみんなの教育プロジェクト対談~学習支援・学習塾編~に参加してレポートしてみた!
イベント日時と方法
【日時】2020/05/11 20:00〜21:30
【場所】オンライン(Zoom)
Zoomでの開催ということもあり、この日は50名を超える教育関係者の方が参加していました!
本イベントの趣旨
今回のイベントの趣旨は、面白いものでした。
それは「抽象な目指したい姿ではなく、具体的な悩みを話すこと」とのことです。
コロナ禍でいち早く動き出して新たなカタチで子ども・若者に先駆的に取り組みを
届けている団体の担当者から、動き出したからこそ見えた「悩み」や「知見」を
ざっくばらんにお聞きし、みんなでシェアできる場に
✓オンライン化って何をどうすればイイ?危なくないの?
✓こういう時はどう始めればいいの?
✓学校での取組の参考に学外のことも知りたいけど情報が多すぎ…
そんな方々にぴったりのイベントだと思いました!
私もこの機会に実際の取組のリアルを勉強したいと思い、ワクワクしながら参加しました!
登壇者の方々の紹介
石神 駿一(特定非営利活動法人Learning for All)
特定非営利活動法人Learning for All
2014年の設立後より「子どもたちの貧困に、本質的解決を。」というミッションを掲げ、困難を抱える子どもたちへ学習支援と居場所支援を展開している。4月からは、「不登校/学習の遅れが見られる子へのオンラインでの学習支援/生活支援」に取り組んできた。
木幡 壮真(株式会社a.school)
株式会社a.school
生徒が主役の探究学習塾「a.school(エイスクール)」の運営、探究学習プログラム「なりきりラボ」「おしごと算数」(2019年グッドデザイン賞受賞)の企画開発・フランチャイズ、様々な法人への教材・プログラム開発に関するコンサルティングなどを行っている。4月からは、従来から行っていた探究型のコンテンツを「オンラインにてプログラムの提供」することに取り組んできた。
ファシリテーター:竹田 和広(一般社団法人ウィルドア共同代表理事)
「一人ひとりが”自分”と”社会”と共に生きられる」未来を目指し、学校や行政、企業・NPO等、教育に熱意を持って関わる方々と、共に子どもたちの未来を創っていけるよう幅広く地域・教育に関わる活動を展開。マイプロアワードをはじめとして、高校生の探究学習などに、深く関わる。今回の「With/Afterコロナへ向かうみんなの教育プロジェクト」の発起人の一人。
オンラインでの取組を進めてみて分かったメリットとデメリット
オンライン化のメリット
- 学習支援を行う際に、家庭の様子が画面上から見えるので、家庭環境を把握しやすい。また、保護者も一緒に参加してくれたりと、親子間コミュニケーションを促進するきっかけにもなりそうだと思う。
- 対面授業だと発言が中々できない子たちもチャットでやり取りができるので、参加しやすい
- オンラインだからこそ「待つ力」が身についた。画面に向かって話した子たちが、相手の反応を待つような動きをするようになった。
オンライン化のデメリット
- 各家庭の通信環境の差によって、オンラインのコンテンツを受けにくい/受けられないことがある。
- 支援物資を送るアクションもしているが、コストがかかるし、全員に対して同様の対応をすることはできない。
文部科学省のGIGAスクール構想も進んでいますが、やはり通信環境や機器がいきわたっていない家庭への教育サービスの届け方は悩みの種になっているんですね。
やったからこそ見えた可能性
木幡さん(株式会社a.school)
- オンラインであれば、全国にコンテンツの展開が可能だと感じた。これまでは、拠点への距離の問題で届けられなかった子どもたちにも授業を届けることができそうだということは嬉しい。
- (常時100名以上の子どもたちが参加してくれたので、)参加人数が多いからこそ、人の目を気にせず、参加しやすい環境になっているというのも発見だった。
- 他学年との交流が簡単に行えたり、オンラインで授業を受け、その内容をすぐに家庭で実践出来るといった、アウトプットまでのジャーニーも描きやすい。実際に、午前中に起業家になる!といったテーマの授業を受けた子が、午後に家庭で「家で家族向けに子どもがコーヒーショップを開業する!」といったことを両親と実践してみたといった事例もあった。
オンラインで距離を超えるだけでなく、距離を超えて多くの人数が参加するからこそ、「人の目を気にしてしまう人見知りの子」が参加するハードルが下がるといったのは、おもしろい発見ですね!
そして、探究学習はやっぱり、オンラインとオフラインが繋がっていくんだなぁというのは、お話を聞きながらしみじみ実感しました!
石神さん(特定非営利活動法人Learning for All)
- オンラインでできる支援とできない支援が明確になった。直接会って言いづらいことも、画面越しだったら言えるといったこともあることを発見した。これからもオンラインの支援を織り交ぜながら実施していきたいと思っている。
- オフラインの場の重要性を再認識できた。人とのコミュニケーションが苦手な子は、画面越しのコミュニケーションに苦労する子もいる。だから、オンラインの支援だけですべてが充足されることは無いのだと思う。
お2人とも、オンラインだけでなく、既存のオフラインの場との接続の重要性をお話されていたのが印象的でした。
実施にあたってぶつかった壁
木幡さん(株式会社a.school)
- 初期はITリテラシーについて、家庭によって大きな差があった。そのため、保護者向けと子供向けの両方のZoom操作マニュアルを作成して、使ってもらうようにした。そうすると、徐々にリテラシーの差が埋まっていった。
- アウトプットを子どもたちから出すこと、双方向コミュニケーション、の2点をどう担保するか?について悩んだ。チャット機能を駆使して、子どもたちからの声を拾う体制を作った。ただし、講師が画面を見ながらチャットを見るのが大変で、結局拾いきれず、最初は上手くいかなかった。大人数の授業では、サブティーチャーを入れチャットの管理やファシリテーターの役割をしてもらうことで解決出来るようになった。
これまでオフラインで当たり前にやっていた子どもたちとの双方向のコミュニケーションを、オンラインに乗せ換えるときに、色々な壁があったんですね。子どもたちの満足度を常に観察しながら、柔軟に体制を変えていく姿勢、勉強になります!
石神さん(特定非営利活動法人Learning for All)
- 家庭の通信環境やITリテラシーの差があって、「そもそも支援ができない」といった状況にぶつかった。これに対しては、機器を貸し出したり、機器の使い方の講座を実施したりした。
- 通信環境が悪かったり、デバイスを持っていない家庭に対して、iPadとモバイルWi-Fiを支援したが、その支援の為には多くの資金が必要になった。
学習支援という性質上、「どうにかして届ける」といった視点で、物的支援まで行っていたんですね…!
これには確かにお金が莫大にかかりそうです…。
これからの取り組みについて
木幡さん(株式会社a.school)
通塾とオンライン授業をどう組み合わせていくかを検討している。
この2か月で分かってきたのは、オンラインの魅力。オンラインを使っていけば、これまで以上にたくさんの方々にサービスを届けていくことができると思う。オンラインで多くの方々に授業を届け、「自宅で自走できる、アウトプットや学習へのモチベーションが高い子たち」には少人数で行うオンラインクラスも届けていく。加えて、そういったモチベーションになっていない子たちについてはオフラインでの伴走を実施していく、などといったオフラインとオンラインの棲み分けを実施していきたいと思う。
石神さん(特定非営利活動法人Learning for All)
この期間は、オンラインの強み・弱み、オフラインの強み・弱みが分かった期間だった。
新型コロナウイルスの影響は長期化していくと思う。子ども・保護者両方からアンケートを集計していて、そのアンケートをもとに、求められている支援に柔軟に対応していきたいと思っている。私たちは、「自分たちが何をしたいか?」ではなく、「何を求められているか?」に従って、取組内容を決めていきたいと思っている。
今回参加してみて
今回、a.schoolさんとLearning for Allさんの話を聞いてみて、オンラインの場は場所に関わらず、たくさんの人への提供が可能になるのだと実感しました。しかしながら、場は担保されていても学習環境が用意できない家庭もあり、そういった部分に課題を感じているようでした。どちらの団体もニーズに応えていて、既存のプランに合ったものを学習者が選ぶのか、学習者のニーズに団体側が合わせた支援をするのか、の違いだと感じました!学習者が一番学びとなる場を選べるように団体ごとで色が出ていて、とても素敵です!
自分が実際に現場に立つ時に、子どもたちに学びを止めないためにも「オンライン」というツールは一つの手段として、勉強しておきたいと思います。
コロナがいつ収束するか分かりませんが、大事なのは「学びを止めないこと」だなと。そして、今回のコロナによって「学び」とはどういったものでなければならないのか考える良いきっかけとなりました。どんな地域でも、どんな環境でも、みんなが平等な学びができるような仕組みづくりが広がっていきますように!